S系御曹司と政略結婚!?
「んなの、当然の結果だろ。俺の子種は執念深いんだよ。華澄のナカも居心地良いんじゃねえ?
やっぱり色々相性が良いみたいだな、俺たちは」
生々しい発言の数々に頬の熱さが加速する。事実は事実でも口にするな……!
返答に困った私が顔を逸らしかけたら、顎をクイッと引き上げられてしまう。
このテのことに疎い私を楽しむヤツはやっぱりたちが悪い。
黒曜石みたいな色の瞳が真っ直ぐに向けられ、胸の鼓動は速まるばかり。
「あと何人作ろうか?……なんてな。——とにかく身体を大事にしてくれ、それだけだ」
「……う、ん、」
子供が出来て気遣ってくれることがとても嬉しいのに、なぜか返事は曖昧になってしまう。
「さて、そろそろ来るかな」
超ド級“S”の予言通り、それからすぐに看護師の松井さんが病室に現れた。
体温を測りながら、別室にいた実紅が落ち着いてから帰宅したことを知らされる。
私たちが話し合いの最中だろうと気を遣ってくれたらしい。彼女の優しさにここでも感謝した。
妊娠中は基本的に薬を飲めないと言う松井さんに、氷枕と再び脱水症状を防ぐ点滴をつけられる。
その後、先生方の回診があり、その場で改めて『妊娠おめでとう』と伝えられた。
やがて人の出入りもなくなって、再びふたりきりになる。
夕方を過ぎ、すでに窓の向こうは暗くなり始めて、窓際に向かった和也がロールカーテンを下ろしてくれた。
その姿を見つめていた私は、当分は減りそうにない点滴パックを一瞥する。
自分の身体の中で小さな命が育まれているのが未だ信じられない。
こんなに弱い私で大丈夫なのか、ちゃんとママになれるのか……。
嬉しさで顔が綻んでしまう一方、いいしれぬ不安に押し潰されそうだった。