S系御曹司と政略結婚!?


真面目に付き合わない人には、浮気や不倫に対するモラルもないのかな?

キスや肌を重ねてもその場限りの関係なんて、やっぱり私には理解出来ない。

貶され虐げられた記憶しかないのに、和也から本当に愛されているのか全く見えないよ……。

目の奥の痛みに気づき、ほの暗い感情をシャットアウト。

興奮するのも赤ちゃんに障るから。……なんて、お腹の子を理由にしている自分にほとほと嫌気がさす。


真実を知るためには辿るべき道だと心に言い聞かせ、対峙する黒い双眸をジッと見据えた。

私の気持ちが落ち着くまで待っていたのか、和也はそこで少し緊張が解けた顔を見せる。


「ちょっと話しただけで、いかに最低か分かったろ?性欲まみれの恋愛不適合者だって。
俺を変えさせたのは華澄、オマエと出会ってからだよ」

「……わ、たし?」

瞠目する私の頬にまたそっと触れると、その表情を緩め頷いてくれた。


「多分、俺はオマエと初めて会った時にその純粋なところに惹かれたんだと思う。
きっかけはどうあれ、華澄と結婚出来て幸せな俺は、今も絶賛恋愛中ってことかもな」


「うそだ……ひどいよ。……私が告白してから態度が変わったし、その前だって……、優しくされたことないのに?
あの夜も、義務で抱いてくれたんだって。わ、たしが、つまんないから浮気されたんだって……。
……だから、そっちから言われる前に、……別れようとしたのにぃっ」

「別れる?んなの、逃げる前に逃げられなくしてやるよ。
——こんな純粋で可愛い生き物、手放すと思うか?」


「……ほ、んとに?」そう紡いだ声は涙に濡れていた。

ベッドの縁に座り直した和也との距離が縮まって、見つめ合うほどに募る想い。

濁りのない黒い瞳の中に映る私の顔はやけに情けなく見えた。

和也はそんな私の額に唇を落とすと、「ばーか」と言いニヒルに笑ってみせた。

もう一度その言葉を信じたい。だから、このぬくもりを私が独占しても良いかな……?


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