S系御曹司と政略結婚!?
そこで表情を引き締めた和也は、頬から伝い落ちていく涙をそっと拭いながらこう言った。
「謝ることしか出来ねえけど、色々ごめん。もっと早く気持ちを伝えるべきだったよな。
あー格好悪いけど、俺も恋愛に関しては“初心者”だし?そういう意味では鈍かったな」
「ふふっ、確かに……!」
堪えきれず噴き出した私の頬をむにっと摘み、「笑うな」と言う“S”神野も悔しそうだ。
普段はどこか飄々とした彼の本心を覗いているようで、ただ愛おしく感じていたの。
何も言わなくても伝わることのほうが少ない。感情をぶつけ合って初めて相手の本心を知れると分かった。
お互いに歩み寄ることはおろか、妙な意地と思い込みで相手を遠ざけて。
どちらも不器用なあまり、関係に余計な不協和音を響かせていたのだから……。
「これで夫婦間の問題は解決。で、あと言ってないのは、あの女のことだな」
さっきの時点で精一杯だったから、主について忘却の彼方に忘れ去っていた。
はぁ、とどこか疲れたように和也は嘆息し、何だか振り出しに戻ったような気分……。
キスのことは許したわけじゃない!と息巻くあたり、今日は私の感情は大忙しだろう。