S系御曹司と政略結婚!?


ひとりの女性の登場によって、閃光が飛び交うように殺伐とした室内。

それは女性の表情が消え、怒りを抑えた冷たい声でもたらされて変わっていく。


「私、いつも言ってたよね。不幸を弄ぶことだけは絶対にするなって。
今回のこと、どれだけ軽く考えてんの?——下手すりゃ警察行き、良くて慰謝料支払い。それ分かってる!?
訳の分からない騒動で、どれほど奥さんの気持ちを傷つけたのか、本気で分かんないの!?
あんなビンタ一発じゃ、本来は済まないのっ!奥さんの温情に感謝しなさいっ!」

突如、私を指さした女性の発言に思わず目を見開いてしまった。


それまで反省さえしていなかった主も、彼女に叱責されてようやく気づいたらしい。

打たれて少し赤い頬に手を置きながら、初めて涙を流している。

「お姉ちゃん……でも、私……お姉ちゃんのためにっ、」


主の慟哭が私の疑問を一気に解消した。——お姉さん……この人、和也の元カノさん!?


ふたりがあまりに正反対の容姿をしていて、言われるまで姉妹とは思わなかった。

主は手足がスラリとしたモデル体型。対して、お姉さんはグラマラス体型で色気たっぷり。

さらには、目尻の上がったつり目気味の主に丸い瞳をしたお姉さん。でも、性格は結構似てますね……?


そのおかげで、和也が吐いた言葉の意味をようやく理解出来たの。

彼が元カノさんを呼んだのは、自分で手を下さずに身内に処理して貰うため。

真意を尋ねたくて隣を見やると、“ご明察”と言いたげに一笑する彼。——触らぬ“S”神野に祟りなし、これ一択だと納得した。


「私のため?なに言ってんの?こんな事して、本気で私が喜ぶと思ったの!?
アンタは自己満足のために、関係ない人様を巻き添えにして傷つけた。それも最低な方法でね……!
ここまで言っても理解出来ないのなら、今日で姉妹の縁切るから」

腕を組んで仁王立ちするお姉さんは、断罪しながら最後に冷たく言い放った。


「なんで?お姉ちゃん本気だったじゃん……あんな男、庇う価値ないっ!毎日泣いてた頃のお姉ちゃん……、ほんと見てられないしっ!
しかも、金持ち女を捕まえて結婚とか、ほんと何なの!?いかにも幸せぶったヤツが許せなかった!」

捲し立てるように叫んだ主は顔を歪めて泣き続け、その姿にお姉さんも罪悪感を覚えているようだった。


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