S系御曹司と政略結婚!?
「華澄が綺麗だからだよ。ねっ、実紅ちゃん?」
そんなふたりの会話に突進していった猛者、もとい小生意気なチビガキ。付け加えて、外面だけは天下一品の息子が井川に同意を求めた。
「そうそう!和臣(カズオミ)くんありがと」
フォローに感謝する井川に、えへへと無邪気に笑うと満足気な表情を見せている。
その4歳になったばかりのチビガキは、外見は俺の小さい頃にそっくりだと両親が言っている。
周囲は愛想の良さと話し方から利発な子だと誉めそやすが、親から見てあれはずる賢いと断言する。
母である華澄のことを普段は呼び捨てにしながら、場面に応じて上手に使い分けているのだ。
華澄はそんな息子に対し、“ドS大魔王2世”だと事あるごとに嘆いている。
いや、それは心外だ。——俺はここまで悪ガキじゃなかったぞ……?
「華澄きれいだよ」
そう言ったチビガキは、今度は華澄に抱きついて甘え始めた。息子をぎゅっと抱き締めながら、そっぽを向く華澄。
「もう!ママをここぞとばかりに褒めても、ぜーったい買わないからっ!」
「華澄ちゃん、頑張っても嬉しさ満点なのが隠れてないからね?——ていうか、和臣くんは何が欲しいの?」
今もそっぽを向く華澄に的確なツッコミを入れるあたり、井川の“天然の鋭さ”は割と的確だったりする。
むっと口を尖らせる妻は、母となった今でもあどけない。ひそかに一笑していると、その最愛の彼女が声を上げた。
「和臣ったら、手錠が欲しいなんて言うのよ!?」
「は?」
井川に助けを求めたらしいその発言。しかし、この部屋にいる誰よりも早く反応したのは俺だった。