S系御曹司と政略結婚!?
不機嫌に部屋を出ていっても、泣き喚いたりは絶対にしないのが和臣で。むしろ、今ごろ俺への復讐方法を練っているのが関の山。
ひとりで部屋を出れば、警護の人間やホテルスタッフに遭遇して確保される。その時点で、瞬時に子供の顔つきで対応してるだろうが。
部屋の扉の先には警護の人間がいるので、プライドの高い息子をほんの少しそっとしておく。それから諭すのが俺たちの教育法だ。
「い、今から調教プレイ……?」
「ち、ちがうわよ!?実紅ってば、なに言うのよ!?も、もう!和也がバカなこと言うからよ…!」
俺と和臣のやり取りを傍観していたドM気質のふたりといえば、自分たちの天然ぶりを遺憾なく発揮している。
何より、天然ふたりは学習能力がなさすぎる。――すぐ傍にいる、ドS人間のスイッチをオンしたとも気づかねえなんてな……?
「井川、オマエは先に会場行ってろ。——それと華澄、オマエはそのまま動くな」
俺の冷笑に何かを察したのだろう。コクコクと頷いて、素早く従った天然秘書のその後はさておき。
「まだ時間もあるし、ここのベッドも試すぞ。その脱がせ易いドレス、最高だな」
「か、和也?」と、後ずさりし始めた華澄の細い腰に手を回して捕まえる。
「動くな、って言っただろ?」
ついに大人しくその場にフリーズした天然で愛しい妻は、着飾ったそのドレスが乱れるのも覚悟すべきかな……?
以前サイトで公開していたSSを編集し、今回掲載いたしました。
続編をご覧下さった方はご存知かもしれませんが、子供は和也にそっくりな男の子です。
そんな和臣くんと和也の華澄をめぐる攻防の一幕でした。
【たったひとつの欲しい物★終】