S系御曹司と政略結婚!?


「それで、今日はどういった用件なのでしょうか?」

3人に距離を置くようにして尋ねた私に対し、一斉に視線が向けられる。

日中ストレスを溜めりまくりの身としては、これ以上はキャパオーバーだと言ってやりたいが、それは押し止めた。

すると、ひとりだけ不思議そうな顔をしていた父が問いかけてくる。

「え?もしかして、神野君から聞いていないのか?」、と。


今日の予定を一切知らされていなかったうえ、会食相手を尋ねればもの凄い剣幕で罵られましたけど?

私は少々怒りを覚えながら、隣で平然としているヤツの無駄に整った顔を見やる。

それでも知らん振りをされては、我慢しないで怨念のこもった視線を送りたくもなる。

すると“S”神野は瞬時に石膏で固めたかのように華やかな笑顔の仮面を纏った。

「私としては社長がお話しになられた方が宜しいかと思いまして。僭越ながら、副社長には何も申し上げておりません」

こんな時だけ“副社長”なんて呼んでるし。必要なことさえ言わなかったじゃん、と横槍を入れたいものだ。

それにいつもは、“オマエ”呼ばわりのくせに。どこまで猫かぶりな人間なのよ、神野って盛大に猫を被った男は。


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