S系御曹司と政略結婚!?
「ハハッ、さすが木目細かい気遣いが出来るな!華澄も彼を見習って邁進しなさい」
審美眼は優れているし、部下として四六時中ともにいたはず。それでもヤツにまるきり騙されているお父様に天を仰ぎたくなる。
「うむ、華澄は女性らしさが欠けているのでな」
その隣で悠長にお茶を啜りながら、私のことに関しては容赦なく欠点を突いてくるおじい様。
何で稀代の経営者がふたりして、コイツの二重人格には気づけないのよ……!
「いえ、そんなことございません。副社長は大変可愛らしい女性だと思いますよ」
化け猫のヤツはふたりに法螺を吹いている。そもそも、可愛いと思っていたらあんなに罵倒されませんよね?
もう、この生産性のない会話にイチイチ突っ込むのも疲れてきた。
味方のいない状況に投げやりになった私は、今だに会話が続く中、目を瞑って瞑想することにした。
「……ぃ、華澄ーーー!」
「……へっ!?」
軽く目を閉じて俗世から離れるだけのつもりが、どうやら眠りの世界に誘われていたらしい。
おじい様の声が見事に割り入ってきて一気に目覚めた私は、顔を強ばらせながら正面を見た。
いささか呆れ顔のお父様と、眉を上げて怒った様子のおじい様のふたりを捉え、あまりの居た堪れなさで視線が泳ぐ。
「まったく、これがビジネスの場面だったらどうする!ましてや、居眠りなんて品の無いことを有川の人間がするな!」
「……はい、すみませんでした」
おじい様のお怒りは尤もだ。あまりの情けなさで項垂れるように謝った。