S系御曹司と政略結婚!?


「悪いけど、初めから話を戻そうか。華澄、ちゃんと話は聞きなさい。いいね?」

「すみません、お手数お掛けします」

おじい様の態度を不憫に思ったのか、お父様は優しく諭すように最初から話し始める。

お陰で眠気なんて吹っ飛んでしまった。にこやかに話すお父様の言葉に、耳を疑ったのは当然のことだ。

まったく信じられない!イヤ、信じたくない……っ!

何かの間違いだよね?時期を間違えたエイプリルフールだけど、って笑い飛ばして欲しい。

いやいや、本気であり得ないから、そんなジョークすら止めて欲しいんだけど。

いま隣にいるこの世で最大の天敵、神野が相手なんてどう考えてもおかしい。

——神野と婚約させられたとか、何がどうしてこうなった?


神さま、さっきの願いは取り消し有効ですよね?

ですからお願いです、この時間をどうか悪い夢にして下さい……。


「華澄、まだ寝ぼけているのか?目なんか瞑って」

「……お父様、何なら一生寝ぼけていたいです」

しかし、本日の神様はどうやら不機嫌らしい。もしくはこの状況を楽しむ愉快犯のようだ。

こちらの必死の祈りが何ら通じることはなく、これが現実なのだと認めざるを得ない。

「なに馬鹿なことを抜かすか!」

神様を詰ったせいで無駄におじい様の逆鱗に触れた今日は、絶対に厄日だ。

苦笑いでおじい様を宥めた私はそれからチラリとヤツに視線を送るが、じつに涼しい表情をしていた。

ああもう、何なのよ!?なんで反対しないわけ!?

きっと(いや間違いなく)アイツだって、この世で最も嫌いな相手—私—が、自分の婚約者になるのよ?


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