S系御曹司と政略結婚!?
「ふぅん、言いたいのはそれだけか?」
尋ねてきた声音とヤツの表情がどこか寂しげで、つい言葉を失ったものの、すぐに正気に戻った。
「婚約の話を進めるつもりなら、私は会社を辞めて有川の家も出るから、あとはお好きにどうぞ!」
そう口にしながらたった今、保身のために決意した。身勝手とか無責任と言われてももう知らない。
たとえ勘当されても構わない。となると、結果的に会社を継がなくて済む……?
働いて蓄えも出来たから大学院にも入れるし!勢い任せだった割には妙案じゃない、と。
今後の明るい未来について呑気に、つらつらと考えていたのが間違いだった。
ヤツは野望に燃える私の身体を引き寄せると、強引にキスをしてきたのだ。
触れた唇は柔らかく、その熱で一気に現実に引き戻される。
「な……っ!」
解放された唇をわなわな震わせる私は二の句も継げず、今なお解放しない男の胸の中から顔を上げるのが精一杯。
「俺から逃げる?んなの、許さない」
妖しい笑みを浮かべながら、私を見下ろすその瞳は嬉々としていて。悪魔の降臨に戦いたのは言うまでもない。