S系御曹司と政略結婚!?


「ったく、 風呂で寝るんじゃねぇよ!逆上せたとかまぬけ過ぎ」

「……すいません」

どうやら浴槽で眠って逆上せてかけていたところに興奮し、そのまま気を失ったらしい。

目が覚めた時にはベッドの上。額には熱さまシートが貼られ、うちわで優しく仰いでいるヤツと目が合った。

「マジで馬鹿だ」

ヤツはこれで何度目かの大きな溜め息をつくと、おでこからぬるくなった冷えピタを取った。

「えーえー、お恥ずかしい姿を見せてすみませんね。ご迷惑をお掛けしました!
馬鹿な嫁を貰ってしまった貴方は非情にお気の毒さまですぅ」

横になっていても、減らず口だけは叩いてしまう。この状況でよく言えるわ、と友人たちも呆れそうだけど。

ヤラせない、可愛げない、美人じゃない。3拍子揃った私にウンザリしてるんでしょう?

何処にも、私自身を必要とする人はいない。だから、……もう誰にも頼ったりしない。

「バーカ、いきなり倒れて心配したんだぞ?」

フッと一笑したヤツは私の頬を撫でると、優しい口調でそう言った。予想外の言葉と態度に触れ、自分でも驚くほどの胸の高鳴りを覚えた。

どうして?どうしてこんな時に、優しくなんかするのよ……。

「どうした?」

体調が悪くなったと思ったのだろう。挙動不審な私の額に触れると、整った顔を近づけてくる。

ちょっと待って、心臓がヒートショック起こしたとか?……これだとまるで、私がヤツを好きみたい。

それは断じてないよね、一瞬でも自分の心を疑った自分が恥ずかしいわ。

“S”神野から不意打ちで優しくされて動揺しただけ。悪魔以上に容赦ないヤツに、初めて優しくされたせいだ。


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