S系御曹司と政略結婚!?
それからはセクハラをされつつも、いまだキス止まり。セクハラ男のせいで私の貞操感覚もおかしくなっているらしい。
性欲処理の役目は御免だけど、ヤツも本気でするつもりはないみたい。きっと、その役目を任せる人がいるのだろう。
それでも、キスだけは毎日場所も弁えずにされている。軽いものに始まって、濃厚なものまでレパートリー多彩だ。
最初のうちは不意打ちでされることが多かったのに、いつしか当たり前のようにキスを受け入れている。
もしかして拒まなくなったのは、ヤツのテクニックに嵌ったの?それとも別の理由があるの……?
「華澄」
「ん?」
今日ものんびり新聞を読んでいたところ、腕を引っ張られ、そのまま唇を重ねられた。
柔らかくて温かいその感触にいつしか慣れてしまい、角度を変えながら深まるキスにどんどん嵌まってしまう。
この男、いったい何人の女性を腰砕けにしたのよ……?
キスだけで朝から身が持たない、とソファに沈み込む。息遣いの荒い私を満足そうに見下ろすヤツに悔しさが募る。
「これから江川先生のパーティーがあるから、今日は出社しなくて良い。スタイリストもあと30分でここに来る」
「江川先生ってあの、政治家の?」
「それくらい常識だろ?馬鹿な質問するな」
また馬鹿ですか。ヤツの手にはアメとムチではなく、最初からスパルタなムチしかない。この前、私が倒れた時に見せた優しさも幻だ。
「聞いてんのか?」
「は、なっ、何?」
「ったく、何度も言わすな。さっさと支度して貰っとけ。オマエの支度中、俺は会社に行くから」
用件を言い終えたヤツはそのまま家を出て行った。部屋には一気に捲くし立てられ、ポカンとしている私ひとり。
慌ててソファから立ち上がると、スタイリストさんの到着前にシャワーを浴びることにした。