S系御曹司と政略結婚!?
「西川さん教えて。私のどこが楽しそうに見えるの!?
毎日毎日、ヤツのせいでストレス溜まりまくりなのにー!」
運転席のシートに手をかけ、背後から必死に答えを求める。困惑顔がバックミラー越しに見えたものの、彼は遠慮がちに口を開いた。
「初めの頃は、副社長のことを不憫に思っておりましたが」
やっぱり同士だったのね。ヤツに罵倒される私を哀れむ視線をずっと送ってくれていたしね。
「ですが、暫くして気づいたんです。社長と一緒におみえの時が最も自然体だと」
「ええっ!?」
予想外の発言をした西川さんのスーツを、思わず後ろから掴んでいた。それは大きな勘違いだよ、と。
「……私がヤツと結婚したこと、今までに何回後悔したと思います?
今日は2回、昨日は4回……ああ、もう数えきれませんから!」
そんな私の反論も、彼のトドメの一撃によって露と消えてしまう。
「いえいえ、その言葉全てが私にはもうノロケにしか聞こえませんよ?
相思相愛のご夫婦に仕えることが出来て私も大変光栄です」
ミラー越しに笑顔を向けられ、声にならない絶叫が頭の中で木霊していた。