S系御曹司と政略結婚!?
寝坊常習犯はこれが無限ループで、いつになれば直るの?と項垂れるまでがもはや朝の日課となっていた。
それでいて食欲だけは別物みたい。私のお腹は今日も休むことなく空腹を訴え始めた。
由紀子さんが用意してくれたバケットを開けると、大好きなサンドイッチに温かいスープ、そして特製スムージーが入っていた。
栄養満点で美味しいそれらからは彼女の優しさが伝わってきて、感謝をしながら食べていた。
その後、自宅を出発してから30分程で会社に到着する。
社屋の玄関前で停車させた小野さんによってすかさず後部座席のドアを開けられ、私はそっと車外に出た。
「小野さん、本当にありがとう!」
出発時点で遅刻すれすれの状態からが余裕で間に合ったのは、すべて速度遵守しながら裏道を抜けてくれた彼のお陰だ。
というか、あまりに利用しすぎてもう裏道とは呼べないかも……?
「とんでもありません、どうぞお気をつけて」
深くお辞儀をした小野さんが微笑み返してくれる。運転からも彼の丁寧さと穏やかさが伝わって来て、恩恵に預かる私は感謝するばかり。
「それでは行ってきます!」
こうして出勤時間で賑わう会社のエントランスに紛れ込んでいく。——これが私の社会人生活の日常の切れ端だ。