S系御曹司と政略結婚!?
追憶の行方
純粋ではなくなったのかも。ううん、純粋さなんてもっと昔に失くしていたね……。
有川の一人娘として小さな頃から厳しくしつけられ、自由とは無縁の毎日だった。
有名私立一貫校に通っていた私は、学校でも安らぎを見出せず息が詰まりそうだった。
特にその学校はヒエラルキーが存在し、打算的な友人関係しか築けない。
教師も名家の生徒には異常に甘く、いつでも平身低頭。当然のように彼らは教師を下に見ていた。
悲しい未来の日本を幼い頃から体験させられた私は、どんどんお金持ちが嫌いになっていった。
——それを決定的にしたのが、自らの男運のなさ。
校内の実情はさておき、良家の息女が通う日本でも有数の名門校。
有川の家は政財界との繋がりも太く、名をよく知られている。
一人娘が跡を継ぐのは明白とあって、お金と立場目当ての男が寄りつくもの。
中学生の時なんて特に恋に憧れるお年頃で、あっさりふたりの男に騙されてしまった。
それでも頑なに身体を許さなかったあの頃の自分を少し褒めておこう。
苦い経験から高等部の3年間は付き合うこともなく、ただひたすら勉強に明け暮れていた。
その間にも逆玉を狙う男が近寄ってきたけど、サラッとあしらう術は持ち合わせていた。
稀にいた面倒な人には有川の力を少し行使して、ちょっと“お掃除”することも忘れずに。
そんな噂もひそかに広がったおかげで男が近づくことも減り、まさにしてやったり。
今思えば、私も私だよね。若気の至りとはいえ、彼らの青ざめた顔は相当なものだったからね……。
恋愛話になると聞き役に徹した高校時代。きっと彼女たちは、私が男性不信なのだと思っていたはず。
頭の中で“男なんて”と結びつけて恋愛に希望の持てない、とても寂しい高校生だった。
そうして息苦しい閉鎖空間を飛び立ち、初めての自由を掴んだ大学時代に、光希と出会うまでは……。