S系御曹司と政略結婚!?
フッと一笑して指の動きを止めると、悔しさ満点に顔を歪める私に顔を寄せてきた。
「必要ないだろ?この家を管理するよう有川から頼まれたのも俺。つまり、管理人が持つものだ」
「はあ!?私たちって一応結婚してるよね?だったら夫婦の共有財産でしょ!」
「華澄は俺と結婚した時点で全ての決定権を委ねた、違うのか?」
管理能力もない私の意思は関係ない、そう言ってるわけ?この、ジャイアニズムが……!
睨みつける私に満足げな顔で口角を上げているヤツ。なんだか、“お前に勝ち目は無い”と言われたよう。
でも、それは間違っていない。こんな俺様男の籍に入ると決めたのは私だ。
ぐうの音も出ないことを分かっている“S”の表情が楽しそうで、面倒になった私は視線を逸らし逃げた。
投げやりな性格に後悔したのは直後。ギシリ、とベッドのスプリング音が静まり返った室内に響く。
「今まで夜這いに来てやらなかっただけ感謝して有り難く思え」
「……は?」
顔を上げた時にはベッドの縁に腰掛けていて。悠然としながらもこちらまでにじり寄ってきた。
「華澄」
艶めいた声音は妖しさを含み、漆黒の瞳は私をジッと捉えて離さない。
白状すると、私はこういった状況に慣れていない。もっと正直に言えばとっても苦手。
お願いだから、これ以上こっちに近寄らないで……!