S系御曹司と政略結婚!?
捕食者の顔つきをした悪魔に、じりじりと追いつめられた私はベッドから抜け出そうと後ずさり。
しかし、着ていたロングドレスが足下で絡まった。さらに艶やかな生地が肌の上を滑り、ついには身動きが取れなくなる。
不格好な人魚姫(図々しいけど)のように、無様に慌てふためく瞬間を捕えられてしまった。
「ねえ、離して……」
「動くな」
短く呟いたヤツは私の腰をグッと抱き寄せ、その腕の中に収めてしまう。
そして名前を呼ばれて顔を上げると、あの妖しい瞳と視線が重なった。
ヤツの爽やかな香りとあたたかな腕の中、さらにこの距離感が緊張を高めていく。
濡れたような瞳に囚われた私はただ息を呑み、抵抗することなんて忘れていた。
暫くして体勢を変え始めたヤツは私の身体をそっと横たわらせる。
仰向けになった私の視界に広がるのは、優しい手つきで頬を撫でるヤツの姿。
まるで壊れ物を扱うようなその手つきでぞくりと粟立つ身体。
“S”の本性は一体どれなの?この行動の意味ってなに……?理由が分からない私は調子が狂ってしまった。
ギシリ、と静かな室内にベッドのスプリング音がまた鳴り響いた。
その瞬間、若干の重みをもって上に乗られた私は目を丸くする。