S系御曹司と政略結婚!?
溢れてくる涙とは裏腹に、しおらしく泣いていた私の心は次第に苛つき始めた。
置き去りにするなんて最低だよね?トラウマを植え付けた光希ですら、ここまで酷い扱いはしてないはず。
ああもう、うじうじ悩むのも止めよう。あんなヤツに期待してた私が馬鹿なんだし……。
ヤツにとっては私との行為なんか、“跡継ぎ作りの仕事”としか思っていない。そう考えなければ、とても耐えられなかった。
やがて涙も止まって重い瞼をグッと開くと、いそいそとベッドから抜け出す。
その途端、一気に空腹感に襲われた。どうやらこの数年、ヤツのお陰で相当図太くなったらしい。
ルームワンピースを着てからバスルームに向かい、軽くシャワーを浴びた私は家事に勤しむ。
このマンションに由紀子さんは来て貰えない。それどころかハウスキーピングまでヤツが断ってしまった。
あの絶品料理が実家に戻らなければ食べられないから悲しい。レシピ通りに作ってもあの味は出せないから。
「家事分担?俺は忙しいからパス。暇なら家事くらいこなせ、甘えんな」
必然と家事一切をこなすようになり、実家で甘えていただけだと身をもって知った。