S系御曹司と政略結婚!?
暫くすると自宅から徒歩圏内にあるスーパーに到着し、メモを見ながら必要なものをカゴに入れていく。
今日は休日とあってか、ファミリー客が多くて意外に混雑していた。
店内を歩いていると、不意に若い夫婦らしきふたりが仲睦まじそうに買い物中の姿を捉えた。
女性のほうはどうやら妊婦さんのよう。幸せそうに歩くその光景が私には眩し過ぎて、胸をキュッと締めつける。
ああいうのが一番の幸せだよ。お金は必要以上にあっても、決して心は満たしてくれない。本当に欲しいモノこそお金で買えないから。
フッと自嘲笑いを浮かべて視線を逸らし、再び手元のメモに意識を戻した。
あとはマッシュルームを買わなきゃ。気持ちを落ち着かせながら野菜売り場へと向かった。
買い物を終えた私はエコバックを両手に提げ、来た道をのんびり歩く。
車にすれば良かったと後悔しつつも、冷蔵庫の窮状のほうが嫌なので頑張るしかない。
鈍臭いとよく言われる私だけど、これでも運転免許と車を所有している。
ただ、あまり自分で運転する機会がない。それこそ、こんな時に使うべきだね……。
その時、バッグの中からスマホの着信音が聞こえてきた。
一旦エコバックを地面に置くと、ハンドバッグから急いで取り出したスマホを操作する。
「……はい」
「オマエ、今どこだ!?」
画面表示を見て電話に出るのを躊躇ったその相手とは、いま最も話したくもないヤツだ。
「聞いてんのか?」
「怒鳴ることないでしょ?買い物を終えて帰る途中だけど」
開口一番に怒鳴られた私は、半ば投げやりに答えてしまう。まさに肩すかしを食らった気分。
それに、今の私が帰る家はそこしかないもの……。