S系御曹司と政略結婚!?


「今、どこだ」

また冷徹で平坦な口調の声が返ってきたので、私も淡々と言った。

「……スーパー石井を出てから5分経ったとこ」

「そうか、」その無機質なひと言で一方的に電話を切られてしまった。

八つ当たりするように、真っ暗な画面のスマホをハンドバッグへ放り込む。

虚しさだけがまた募っていく。私は所詮、言いなりの人形としか思われていないのだ。

足下に置いていたエコバックを再び両手に提げると、また歩き始める。

足取りと荷物がさっきよりも重く感じてしまう。これも心境の表れかもしれない。

辛さに耐えられそうもないのに、その重さからは逃れられない。最後は逃げようとする私は、本当に弱虫で中途半端だね……。

とぼとぼ歩き続けていると、背後からクラクションを鳴らされた私は肩越しに後ろを見た。

視線の先で捉えた光景に大きく目を見開くと、今度こそそちらに振り返った。


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