S系御曹司と政略結婚!?
勢い任せ
「よし、出来た!」
帰宅してすぐにご飯を作りを始めて、それほど時間もかからずに完成させた。
今日のメニューは生ハムとルッコラのサラダ、白身魚のソテーとキノコのパスタだ。
こう見えて意外と料理好きなのだけど、実家では由紀子さんが作ってくれるので料理をしなかった。
私が作るよりはるかに美味しいお料理を食べられるから、作る必要もなかったんだよね。
ゆ
これも言い訳だね?ヤツとの生活が始まってから、いかに怠惰な生活を送っていたのか分かるから。
家事と仕事を両立させるなんてムリだと思っていたこともそう、最初から諦めていただけだと。
エプロンを外してリビングを出ると、目的の部屋の前で立ち止まった。
「……なんだ?」
目の前の扉をノックすると、ドア越しに聞こえてくるのはいつもの冷たいワントーン口調。
「ご飯出来たよ」遠慮がちに告げると、リビングに舞い戻った。
この気まずさの理由は、あのあともずっと口を聞いていないからだ。
迎えに来てくれたヤツに対して、“迎えに来てくれてありがとう”さえ言えなくて。
これだと八つ当たりしているようなものなのに。私ほんとに最低だね……。