Ｓ系御曹司と政略結婚!?

入社と同時に副社長のポストに就任した華澄は、その綺麗さがすぐに社内外に広まった。

社長から業務継続しながら彼女の専属秘書を命ぜられ、ずっと傍で見守ることになった。

まあ、寄りつこうとする男を蹴散らしてただけだが。

華澄は男嫌いの節がある。やたらと警戒する割には無防備過ぎる、だから目が離せない。

その危なっかしさに苛立つ度に、関係のない話を引き合いに出して彼女を詰っていた。

初めこそ怒りを露わにするが、すぐに諦めモードの瞳に戻ってしまう。それが歯がゆかった。

まあ、俺にだけは嫌悪感一杯なのが見て分かるし、それが隠しきれてなかったけど？

こうして敵対関係を形成していた俺たちは、当然のように距離が縮まることもなかった。


俺たちの状況を知ってか知らずか、有川の２トップは俺たちの結婚を早めると言い始めた。

それも早く隠居生活を送りたいからという、じつに身勝手な理由だ。

とはいえ、俺にとっては好都合。——華澄を手中に収めることが叶うのだから。

もちろん向こうの反応は想定内だったけど……？