S系御曹司と政略結婚!?
初めて祖父と父に抵抗したらしい彼女の努力も虚しく、政略結婚はとんとん拍子で進んでいく。
流石の俺も罪悪感はあったし、良心の呵責にかられた。
何より、彼女がさらに心を閉ざしてしまわないか、その心配もしていた。
しかし、荷物と共に新居に投げ込まれたらしい華澄の反応は予想とまるで違っていた。
あの頃の輝きを再び纏った彼女は、意思のある鋭い眼差しを俺に向けてきたのだ。
俺がひと目で惚れた、かつての瞳を取り戻してくれたことが素直に嬉しかった。
ただひとつの問題は、心底嫌われているということだ。
それで誰が諦めると思う……?悪いが俺は、仕事でも諦めの悪さに定評がある。
無理矢理していたキスも、次第に受け入れ始めて。その従順さで俺の加虐心を刺激するあたり、華澄はドのつくMだ。
ただ、どれほど欲に駆り立てられても抱くことは出来なかった。……彼女を振り向かせるまでは、と。
この決意を変化させたのは、元彼が現れた時だ。
元カレと会っただけで悲壮感に満ちた華澄。その表情が全てを知らせてくれた。
今でも彼女の心を占めるのがヤツだと分かって、どうしようもなく腹立たしかった。
もう感情を差し置いても良い。身体だけでも、俺に預けてもらいたくなったのだ。
——その翌日に、『好き…』と言われてどれほど驚かされたことか。
鈍感な華澄は、こっちの動揺なんて微塵も気づかなかったようだけど?
まあ、普段の照れ隠しにも気づかねえなら当然か。——ホント不器用だよな、俺たちって。