S系御曹司と政略結婚!?
両片想い
「これから馬鹿のあとに“被害妄想”も付け加えようか?」
「……断固拒否します」
「華澄しか似合わない称号なのに」
肩に置かれた手の力と真剣な眼差しに息を呑んだのに、蓋を開ければこれだ。
はぁと遠慮なく息を吐き出した私を、愉悦混じりに笑うヤツの本意がまったく見えない。
「それと、俺がいつ華澄を嫌いだと言った?」
まさに気の抜けた瞬間を狙い撃ち。パッと顔を上げると、ニヒルな笑みを浮かべて答えを待つ彼と目が合う。
馬鹿で鈍足な無能といった失礼発言なら無限ループだ。けど、思い返しても見当たらない。
「お、仰っていません、かも……?」
結論の自信のなさから疑問符で濁す。渇いた笑いで誤魔化そうとしたら、ヤツの眉根がぴくりと動いた。
「言ってねぇから聞いてんだよ!」
「なっ!そっちも悪くない!?あれで嫌われてないって分からないわよ!……わ、私だけ、冷たくされて」
ヤツと対峙する度に我慢強いはずの精神も、木の枝みたいにポキンと軽く折られてしまう。