S系御曹司と政略結婚!?
やっぱり私は、お金と地位を目当てにされただけ……?
あれから進展がないのは、からかわれただけなの……?
「……副社長どうかされましたか?」
「あっ、ごめんなさい!資産運用について少し考えてて……」
副社長室のデスクにかじりついていたはずが、悩んで手つかずのまま。それを取り繕って濁そうとする。
「もっ、申し訳ございませんっ!差し出がましいことをして」
しかし、予想外の反応をされてしまって、こちらのほうが慌てふためく羽目に。
「と、とんでもないっ!こちらこそ、心配させてごめんなさいね」
「そ、そんなっ!副社長が私なんかに謝らないで下さい~!」
「そっ、そうだよね!本当に気にしないでね?井川(イガワ)さん」
どちらも必死に否定するものの、立場上こちらが折れなければならない。
「本当に申し訳ございません」
礼儀正しく、とても気遣いの出来る彼女。しかし、平身低頭すぎるところが少々難点。
そんな彼女は、井川 実紅(いがわみく)さん。主と同期、そして同じ秘書課という女性だ。
さらに、私の新しい専属秘書さんとしてサポートして貰っている。
“イイ性格”をしている主とは違って、とても純粋だし、真面目で知的なの人なんだけど。
彼女はMが有り余っているので、さっきのような行き違いで謝り始めればキリがない。
ヤツのお陰で自分がMだと気づいたけど、M気質がコンビになると時々バグが発生してしまう。
苛々していたのは事実なのに、ヤツの暴言を聞き流していた頃がやけに懐かしいわ。