S系御曹司と政略結婚!?
「おおきにお嬢さま、また来ておくれやす」
「とても美味しかったです、ごちそうさまでした」
東京では滅多に触れることのない滑らかな京都弁に和む。私たちは元気な大女将に見送られ、お店を後にした。
「華澄さん、すごく美味しかったよ!ありがとう」
会社に戻る途中、西川っちが運転をしながら話し掛けてきた。
「うん!すごく上品なお味で美味しかったよね~。華澄ちゃんありがとう」
続けて実紅もそう言ってくれるから、ふたりの屈託ない笑顔に心が温まっていく。
「本当?私の母が京都出身だから、私も京料理が大好きなの。また一緒に行こうね」
「ほんとっ!?かわむらのお料理だったら、私どれだけでも食べられるかも」
「華奢な華澄さんは別として、実紅ちゃんは食べすぎに気をつけたほうが」
バックミラー越しに実紅を見る西川っちは、ちょっと意地悪な顔つきだ。
「はぁああ!?西川っちセクハラだし!えーすいませんね、ぽっちゃりでっ!」
ふたりの言い合いは到着寸前まで続き、車内には笑いが絶えなかった。
ふたりと打ち解けられたお陰で、会社に戻るまでは楽しい時間が過ぎていたの。
どうして人生はこんなにもシビアで、タイミングが合わないんだろう?
新たな裏切りが待ち構えていたなんて、この時は想像もしなかったよ……。