S系御曹司と政略結婚!?
悲しみ+“K”
副社長室に入ったその途端、実紅は仕事モードになった。
基本的にキッチリ仕事をこなす有能な子なのだ。……M気質の問題を覗けばね?
何より思慮分別をつけるその姿は格好良く、頼もしく感じさせる。
「副社長、14時より社長との打合せにございます。そろそろ社長室へ参りましょうか?」
その言葉で腕時計に視線を落とすと、約束の15分前を告げていた。
「そうね、ちょっと早いけどその分短縮すればいいわ」
席を立った私は打合せに必要な資料とタブレットを手にする。
事前にヤツから午後は外出予定は無いと聞いていた。それなら早めた方が喜ぶだろう。
うん、間違いないよね。さっさと終わらせろとか罵倒されずに済むはず。
「了解いたしました」と言い、傍らで準備を終えた実紅も立ち上がる。
もしもこの時、実紅が早めに伺うと社長秘書まで連絡を入れていたら。
何より、間の悪い私が浅知恵を働かせて、早く行こうと決めなければ。
きっと辛い事実も、知らないままだったんだよね……?