S系御曹司と政略結婚!?
それから床に座った私は膝枕をして意識のない彼女を支え、その場でただジッと待ち続けた。
「ハァ、実紅ちゃんどうしたんだよ?って華澄さん!?」
連絡を入れてすぐ駆けつけてくれた西川っちは、華澄ちゃんの状態にやっと気づいた。
そう、助けを求めたのは彼だ。彼女が信用を置いているから安心すると思って。
「どうしたの!?」
彼は白い手袋を外しながら、こちらに聞いてくる。
「突然、意識を失って倒れたの。呼吸はしてて怪我もないけど、早く病院に連れていって欲しくて」
華澄ちゃんを容易く抱き上げた西川っちは、立ち上がった私に真剣な眼差しを向けてくる。
「華澄さんの主治医がいる病院に行くから、実紅ちゃんも早くっ!」
「う、うんっ!」と頷いた私は早足で彼の後を追った。
運転手に抱えられて意識のない副社長の姿に、ロビーですれ違った人は怪訝そうな顔で見てきた。
そんなのどうでも良くて。とにかく病院へ向かうことしか考えてなかった。
西川っちが華澄ちゃんを後部座席に乗せる間に助手席に乗り込む。
発車させて暫くしても意識の戻らない彼女のことを、私はずっとバックミラー越しに窺っていた。
後部座席で力なく横たわる華澄ちゃんにキリリと胸が痛む。
陶器のように真っ白な肌にクリっと大きな瞳。初めて目にした時はフランス人形かと思ったほどの美人さん。
そんな外見の美しさだけじゃない。内面はとっても清らかな温かい人なのに。
どうしてこんなにも優しい人を傷つけるの……?
道すがら西川っちがハンズフリーで病院に連絡を入れてくれた。
華澄ちゃんの緊急時に備えて、私たちには様々な連絡先が知らされているのだ。
普段おどおどしていてもテキパキとこなす彼の姿を見て、判断は間違っていなかったと思えた。
やがて病院に到着すると、ありえない数の医師と看護師に驚いてしまう。
それもそのはず。【有川総合病院】という名前に納得する。——ここは会長が経営する病院だと。
医師たちは華澄ちゃんを後部座席からストレッチャーに移して即座に運んでいく。
そのまま華澄ちゃんは主治医に診察を受けるのだとか。有川財閥のすごさを改めて見た気がした。
特別室で処置を受けている華澄ちゃんの意識が、どうか早く戻りますように……。