S系御曹司と政略結婚!?
暫くして、有川総合病院に到着。車外に出ると視線の先に見慣れた車を発見した。
目的の車の運転席の窓を叩くと、乗っていた男は驚いた顔で慌てて扉を開けた。
「オイ西川!さっさと案内しろ!」
西川がビクビクしながら車を降りると、俺たちは足早に病院の中へ入っていった。
「副社長は目覚めていませんが、命に別状はないそうです。
午後、社長室のフロアで倒れられたのを私がお運びいたしました」
“命に別状はない”この言葉でどれだけ安堵したか分からない。
そこで少し冷静になった俺は、倒れた場所が社長室のあるフロアだった違和感に気づく。
「こちらに副社長がお見えです。では、私はこれで失礼いたします」
「ああ、助かった」
目的の場所に着いたところで、西川は深々とお辞儀をしてその場をあとにしていった。
俺は一呼吸置いてから特別室のドアを何度かノックする。
返事がなかったのでゆっくりとドアを開けると、大きなベッドで点滴に繋がれ青白い顔で眠る華澄の姿を捉えた。
すぐにベッドの縁に駆け寄った俺は、その頼りない姿を前にして胸がギュッと苦しくなる。
華澄……俺はオマエに無理をさせすぎたのか?どうしてこんなことに……。