S系御曹司と政略結婚!?
過去の傷
大好きな史学の勉強に没頭した大学時代。私はそこで、初めて大切だと思える人に巡り会えたの。
打算的な関係に苦心することもなく、ただの華澄として仲良くしてくれる友人たち。
そして、歴史をさらに夢中にさせる静かな空間で出会ったのが、光希その人だ。
裏切りが横行する冷たい世界では、疑ることで自分を守っていた。そんな私に温かい安らぎを与えてくれたの。
付き合っていたあの頃は、彼と一緒にいられるだけで幸せだった。同時に世間知らずなことも教わった。
居酒屋や遊園地、キャンプに登山、イルミネーションも観に行ったりしてイベントごとは忙しかったくらい。
初めて親友と呼べる子と出会ったのもその時で。彼のサークル仲間やバイト仲間との飲み会にもたまに呼んで貰えた。
毎日が新鮮なものに変わり、人との繋がりが素晴らしいものだと教えてくれたのも彼。
小さな空間で真面目に生きていただけの無色透明だった世界が、鮮やかに色づき始めたのだから……。
好きで好きで仕方ないくらい、彼のことをただ愛していた。
愛情は一度手に入れたら永遠に続くもの。それが夢物語であるとも知らないで。