秘密の花園×名なしの森

 長い前髪の奥にある彼の瞳はあまりにも純粋で、瞬きさえ忘れてしまう。水晶体に映ったあたしは、なんだかぽけっとしていた。

 柔らかそうな、色素の薄い髪(たぶん地毛だと思う)。ほんのり色付いた頬。少し薄い唇は薔薇色で、まるで女の子みたい。けれど、あたしより頭ひとつ分くらい背の高くて、やっぱり男の人なんだなぁと思う。

 急に、湊くんを“男の子”として意識してしまって、とっさに繋いでいた手を振り払ってしまった。

「っ!」
「わ、ご、ごめんね」
「い、いえ……」

 ……気まずい。

 そのまま、あたしも湊くんも口を利かなかった。

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