秘密の花園×名なしの森

 湊くんはなにも言わずにあたしの話を聞いてくれた。

「ごめんね、こんな話して」
「いえ、全然……」

 どうして、こんなこと彼に話したんだろう。

 誰にも打ち明けたことのない過去。何故か、彼になら話せた。包み隠さず、なにもかもを。

「あたし、夢なんだ。あたしの全部を受け入れてくれるフツーの人と、フツーの恋をすること」

 これも、誰にも言ったことのないこと。子どもじみた夢、なのだけれど。

 熱くなった目頭、思わずこぼれそうになる涙を堪えて、強がる。あたしの、悪い癖。

「なぁんて、ね」

 無理矢理笑顔を作って振り返ろうとした瞬間、

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