秘密の花園×名なしの森

 あたしを抱きしめる腕が、強まる。湊くんのふわふわの髪が、首筋に当たってくすぐったい。

 不意に、鎖骨の辺りに雫が降ってきた。

「なんで湊くんが泣くの?」
「くゆりさんが、泣かないからです……」
「――馬鹿。それじゃああたし、泣けないじゃない」

 苦笑しながら、あたしは涙を流した。

 どうしてこんなに優しいんだろう。

 どうしてこんなにあたたかいんだろう。

 どうしてこんなに……愛しいんだろう。

 昨日出逢ったばかりなのに、あたしは彼に惹かれはじめている。

 ――けれど、そんなの関係ない。

 今はただ、抱きしめられていたい。そう、思った。



――20071215 / つづく

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