秘密の花園×名なしの森
彼は、落ち着かない様子で辺り――あたしの部屋をきょろきょろと見ていた。もしかしたら女の子の部屋自体、彼にしてみれば珍しいのかもしれない。
あの時、あたしは窓辺の鉢植えに水やりをしていた。
その途中、手が滑って――じょうろの落下は免(まぬが)れたけれど、中に入っていた水を通行人である彼にぶちまけてしまった。おかげで彼はびしょ濡れ。申し訳ないことをしてしまったと、彼を横目に小さな溜め息を吐いた。
ついさっきの出来事を思い出して、あたしはふっと笑った。ちょっと不謹慎かもしれないけれど。