秘密の花園×名なしの森
梅雨入り前の空はからりと晴れ渡っていて、雲もまばら。入道雲になり損ねたもくもくとしたそれらは、ゆっくりと空を泳ぐ。
――それにひきかえ。せわしなく動く人、人、人。僕はその波に飲まれそうになりながらも、前へ進む。
額をつうと伝う汗の雫がうざったい。捲り上げた長袖の裾でそれを拭った。もうとうに昼を過ぎたというのに、太陽は真上にあるみたいだ。そのくらい、日差しの強さを感じる。
京都駅を出てすぐの、スクランブル交差点。見上げると、ビルの上にそびえ建つ白い塔――京都タワーが、空へと伸びている。
……慣れない。
心の中でひとりごち、僕は足を止めた。