秘密の花園×名なしの森
NANAさんは僕の向かい側に座り、手紙を見せてくれた。
その手紙は、二、三年前に僕が彼女に出した、いわゆるファンレター。……今となっては、ちょっと恥ずかしい。
(でも……ずっと、持っていてくれたんだ……)
「あたし、このお手紙があったから頑張れたんですよ。ずっと……お礼が言いたかったの」
照れたように笑う彼女に、思わず見とれた。細められた目の涙袋が、ぷっくりと膨らむ。
NANAさんは僕の手をきゅっと握って、
「ありがとう」
今まで見たことのない、優しい笑顔。……やっぱり、可愛いや。
面と向かってお礼を言われると、妙に照れる。僕は彼女から目を反らした。