秘密の花園×名なしの森
 親元を離れて、丸二年。知り合いから借りたこの家だけが、本当のあたしを受け入れてくれていた。この家だけだと、思っていたのに――。

 今あたしを抱きしめている、後月湊というこのひとは、あたしを受け入れてくれた気がした。

 異性装者に出会ったのは、彼が初めてではない(その子は女の子だったけど)。彼女は、男装している時の自分が好きで、男装している時がいちばん幸せだと言っていた。

 原因とか理由とか、専門的な知識がないあたしにはわからないけれど、異性装が(とくに女装は)世間になかなか受け入れられないってことはなんとなくわかる。……でも、それって哀しいことのような気がする。だって、“全部ひっくるめての自分”を否定されるのと一緒だと思うから。

(あたしだって、ある意味“同じ”――……)

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