秘密の花園×名なしの森

 それから、ふたりでいろんな話をした。

 彼――湊くんは、六つ年上のお姉さんがいることや、彼はお姉さんのお店(紅茶の専門店らしい)の手伝いのために東京からこっちに来たこと、お姉さんはすごく気が強いこと……好きな紅茶の種類とか、好きな音楽とか、ほんとにいろんな事を教えてくれた。

 あたしも、今は病院に通っていることや、この家にひとりで暮らしていること、知り合いのネイルサロンでアルバイトさせてもらっていること……好きな歌とか、好きな香りとか、他愛のない話をした。

 とりとめのない会話。だけど、嬉しかった。こんなにひとと話すのが楽しく感じるのなんて、久しぶりだった。

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