秘密の花園×名なしの森
思っていたより、夕方の風は冷たかった。もうすぐ夏だっていうのに、一歩外へ出れば秋のよう。なにか一枚羽織(はお)ってくればよかったと、今更思う。
京都駅の方を向いて、烏丸通を下がる。
家と駅とは駅と目と鼻の先。スクランブル交差点の手前にある、地下への降り口からかすかに光が漏れている。階段を一段ずつ降りれば、迫り上がってくる生ぬるい風が頬を撫でた。
分厚いガラスのドアを押し開ければ、時間なんて関係のない世界。
地下街は夕方でも暗くなることのない蛍光灯に照らされていて、少し眩しいくらい。
あたしは迷うことなく、通い慣れたネイルサロン・『Serendipity(セレンディーピティ)』へと向かう。