秘密の花園×名なしの森
気が付いたら、あたしは駆け出していた。
受付カウンターを過ぎたところで、何歩か戻って、
「萌さん、ありがとう!」
彼女はまたひらひらと手を振ってくれた。今度は、掌をこちら側にして。
あたしは彼女に最大級の笑顔を向ける。きっと、あたしが今まで見せたことのない笑顔だったろう。
眩しい地下の街を、思いきり突っ切った。
「くぅちゃんったら、けなるいわぁ。――応援しとるで、頑張りゃぁよ」
くすりと笑んだ彼女の声が、耳をかすめた気がした。