秘密の花園×名なしの森

(デートなんかじゃ、ない……)

 シンクの中の洗い桶に残った泡を、指でなぞる。くしゅ、と音を立てて気泡が潰れた。あっけなく消えたそれが、僕自身のようで少し怖くなった。

 デートではない。

 少なくとも、彼女――くゆりさんはそう思っているはずだ。

 ――僕なんか。

 いつでも卑屈な自分が悔しい。

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