秘密の花園×名なしの森

(気に入るってどういう意味だろう?)

 思案を巡らせる一歩手前で、

「はい、お待たせ~」

 くゆりさんは道具かなにかの入ったかごを手に戻って来た。

 僕の真向かいの席に座った彼女は、満面の笑みでこう言った。

「さあ、湊くん。手ぇ出して?」

 目の前に差し出されているのは、くゆりさんの手。それに自分の手を重ねるのを躊躇っていると、強引に手を引ったくられた。

 ひんやりとした、小さな手。

 昨日もこうして手を触れ合わせたというのに、心臓がどきりと跳ねる。

 NANAのファンだからじゃない。

 気付かされた恋心……くゆりさんが、好きだから。

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