秘密の花園×名なしの森
ぬるま湯みたいな液体に指先を浸されて約十分。今はタオルに指先を包まれている。
「じゃあ甘皮やっつけるね」
彼女は、僕の爪の生え際にクリームみたいなものを塗り込んで、ガーゼを巻いた棒で甘皮をゆるゆると押し上げた。人差し指から一本一本、丁寧に。
ちらりと彼女を窺うと、真剣な顔をしていた。
彼女の手に包まれている指。やっぱりどきどきする。けれど、彼女が僕のために真剣になってくれるのが嬉しい。
両手とも甘皮の処理が終わって、指先をガーゼで拭われた。
「はい、じゃあ次ね」
やすりを手に、彼女は至極楽しそうに笑んだ。