秘密の花園×名なしの森
「湊くんの手って、すごく綺麗」
「そ、そうですか?」
「うん。おっきくて、優しくて、骨張ってなくて。あたし、好きだな」
好き。
何気なく発しただろうその言葉に、胸が高鳴った。
彼女は、僕の爪をやすりで整えている。ネイルサロンで働いているだけあって、手際がいい。たまに姉さんがやっているのを見るけれど、全然違う。
「湊くん? どうかした?」
くゆりさんの声にはっと顔を上げると、彼女は上目遣いに僕の顔を覗き込んでいた。その距離、約十センチ。
(ち、近い……!)
思わず顔が熱くなる。なんでもないと首を振ったら、メグミさんがくすくすと笑った。彼女は姉さんと似たような“匂い”がする。なにもかも見透かしているような、そんな匂い。くゆりさんは不思議そうに首を傾げていた。