記憶は私に愛をくれない。
Ⅰ,-夏の夜に。-
「あーーー、だるーーーい」
入学早々に地獄を味わった私は今、授業を終え、部活に向かう途中である。
私は小学2年生から続けている水泳部に所属した。
もちろん、あいつ、久代陸も水泳部だ。
続けてたんだなーって思うとちょっと嬉しいけど赤の他人の顔を毎日見てると思われると違和感しかない。
季節は6月。梅雨まっただ中、熱くなったプールまで続くアスファルトを歩く。
校舎から微妙に遠いそれを歩く道のりは長く感じる。
「ほーーら、早く行かないと遅れるよ!」
入学してから仲良くなった仲島レイカに背中を押され、小走りでプールに向かう。