記憶は私に愛をくれない。



「何したんだよ、お腹空いて立てませーんか?」




いきなり頭の上から声が降ってきて顔を上げる。




「陸……。」




「あ、鼻緒切れたんだ。」



私の下駄を見ると、よいしょっ、と私に背を向けてしゃがんだ。



「乗れよ。」


つまり、おんぶ????


「早く。ここじゃないとこ行こう。」



お言葉に甘えさせてもらって陸の背中に乗る。
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