記憶は私に愛をくれない。
「でも目が覚めたよ。俺、明日から東京行くよ。」
私は、振られたの???
でも、また陸が練習するっていうのが嬉しくて満足だった。
陸は少しだけさみしそうな顔をして私を隣に呼んだ。
陸はいつの間にかベッドに腰掛けていて、その隣に私が座ると、
陸は私を包み込むように隣から抱きしめてきた。
「え、ちょ…陸???」
「俺、怖いんだよ。周りに誰もいねーのが。いつもならお前や皆が俺の傍にいていつも文句だったり褒めてくれたりする。でも、あそこには俺しかいねぇ。知ってるやつがいねぇんだ。コーチに怒鳴られてばっかで気持ちもだんだん入んなくなって、今日みたいになっちまった。少しだけ、このままでいいか?」
初めて聞く、陸の弱みだった。
初めて。
ずっと、言ってくれなかった。