記憶は私に愛をくれない。
「有子さん、明日から東京行くって。」
「あらそー???ありがとねー、美初ちゃん。でも急に明日とか言われるのも困るわねぇ。」
有子さんの顔がパッと明るくなった。
有子さんは本当に表情豊かな人で見てて面白い。
「美初………???」
部屋の奥から名前を呼ばれて振り返ると、凜奈がいた。
「凜奈…、」
凜奈は今は事実上、陸の兄弟。だけど、陸の混乱を防ぐために初対面の人のふりをしていた。
しかし、本当は凜奈とも仲がいい。
「美初、陸のこと好きなの?」
いきなり話し出す凜奈。うん、っと頷くと
「まぁー、ロマンチック」
と有子さんが反応した。顔見えないけど、たぶん真っ赤なんだろうな。
「陸のこと、幸せにしてあげてね。」
凜奈は素直に笑った。