あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ

歩くこときっかり10分、3階建てのマンションに着いた。

それほど大きくなく、全部で6件だけの建物だけれど、エントランスは煉瓦がきれいに並べてあり、低い樹が植えられていて雰囲気がよかった。

「素敵ですね」

「そう、よかった」
と、そっけない言葉を返す課長。

白いタイル張りの外観に、建物の周りの空いたスペースに小さな庭が作ってある。
ここには、都会の憧れの生活が詰まっていた。

「エレベータつけてないけど平気?」

「はい。お年寄りじゃありませんから」
それに、ネットカフェで過ごすことを考えたら、天国ですって。

それにたった一つ階を上がるだけ。2階じゃないですか。
案内されるままに階段を上がる。


「ちょっと待ってて」

鍵を開けて中に入ると、白で統一された空間があった。

一日、不動産巡りでこの辺りの不動産を見て来た私としては、こんなところに住んだら、給料の大半は飛んでしまうことくらいすぐにわかった。
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