あ甘い恋は、ふわっと美味しく召し上がれ
まだ、新しい。
引っ越して間もないのかな。


「すごくいいお部屋ですね」広くてピカピカで。

「それはどうも」


課長が、上着を脱いで、ネクタイを緩める。

こっちに向かってくる。

軽くパニックになる。

いきなりですか?

「えっと……」まだ、心の準備が。


このまま抱きしめられたらどうしようと、緊張し、心臓が飛び跳ねそうになる。

彼が迫って来る。
どうしよう。

体が触れるかと思ったところで止まった。

「ちょっとごめん」

ん?

ガラッと扉の開く音。

課長は、私のすぐ横にあるバスルームのドアを開けた。


「疲れてるだろう?バスルームは好きに使っていいから、先に入ってきなさい」


「課長は?」雰囲気も何もない声で答える。

彼は、私からすぐに目をそらした。


「俺は、もう少しこっちで仕事をしてるから、自由に使って」
リビングの椅子に上着をかけて、背を向けて座ってしまった。

「えっと……」

「遠慮するな」遠慮はしてないですけど。



えっと……




課長は、パソコンンのスイッチを入れ、すでに仕事モードに入っている。

カタカタキーボードを叩く音に拒否されたみたいに、「お言葉に甘えます」と言って私は、バスルームに入った。

お風呂のシンクも、きれいでピカピカしてるけど、そんなに使われてる様子がない。


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